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泉田法律事務所

自由診療と健康保険診療

交通事故の場合、
健康保険が使えない
という誤解が、
よくあります。

もちろん使えます。
第三者行為災害という手続きをとって、
健康保険で通院ができます。

健康保険を使った場合、
通常、治療費の7割を健康保険組合が負担します。

ところで、一般的に、
任意保険会社は、
交通事故被害者の治療費については、
「一括」といって、
医療機関に直接支払います。
この場合、医療費は、健康保険を使わず、
自由診療として扱われます。

この自由診療と健康保険診療とは、
どのような違いが出てくるのでしょうか。

この点、あまりご存じない方が多いですが、
すべての治療に点数があり、
その点数に応じて医療費が決まります。

自由診療の方が一点あたりの単価が
高く設定されていることが多いので、
医療費は同じ治療を受けても、
自由診療のほうが高くなります。

つまり、自由診療のほうが、健康保険診療より、
同じ治療を受けても医療費が高くつくのです。

ここまで書くと、ぴんとこられる方も多いと思います。
つまり、健康保険を使うと、
病院の収入が減るということになります。
他方で、保険会社は、支払いが減ることになります。

そうすると、交通事故被害者の率直な感想としては、
お世話になっている病院が損をするのに、
なぜ、加害者側の保険会社を得させなければならないのか
とお思いになることと思います。

しかし、被害者にとって、そうも言っていられない事情があり、私は、健康保険を使って治療を受けることをお勧めする場合があります。

 加害者が任意保険に加入していない場合
3割の自己負担で済むので、
相手方から回収できないリスクを考えると、
健康保険を使うのは必須です
(相手が大金持ちならばいいですが、
大金持ちは通常保険くらい加入してます)。
また、自賠責保険には加入していたという場合でも、自賠責保険は傷害(治療費、休業損害、通院費用等)につき120万円が上限となっています。そのため、回収が可能な自賠責の範囲内で適切な治療を受けるためには、医療費総額を抑える必要が出てくるのです。

② 被害者にも過失がある場合
その過失分は自己負担になりますから、
治療費の総額が安い方が有利になります。

③ 治療が長期化・高額化する場合
自賠責保険は傷害につき120万円が上限となっていますから、逆に言えば、任意保険会社は、120万円までなら、自賠責保険から回収ができるので、わりと、容易に支払いに応じてきます。
しかし、120万円を超えてくると、保険会社は、治療費の打ち切りや出し渋りをしてきます。
そのため、被害者としても、きちんとした治療を受けるための防衛として医療費の総額を抑える必要が出てくる場合があるのです。
もちろん、重篤な事故の場合では、そのような120万円の上限など、当然、超えますから、保険会社も支払ってきます。しかし、健康保険を使って医療費を抑えると、任意保険会社も、健康保険を使ってくれたからということで他の点で大きな譲歩をしてくることもあります。

他方で、健康保険ではカバーされない治療があることにも留意が必要です。
インプラントなどは、
健康保険ではカバーできません。
健康保険を使うことを許容していたばかりに、
そのような治療が出来ないというのでは、
泣くに泣けません。

ただ、健康保険でカバーできる範囲というのは、
きわめて広くなってきているので、
そういった例も少ないでしょう。

また、医療機関としては、
同じ治療をしても、
自由診療にしたほうが、
収入が多くなるというのが
事実であり、
交通事故は健康保険は使えない
などと説明する医師が
一昔前には結構いました。
いまは、そういう話はあまり聞きません。

いずれにしても、
このような知識など、
日常生活では必要ない知識ですが、
いざというときには、
ほとんど必須の知識に思えます。
参考になればうれしく思います。



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